目的:近年,悪性腫瘍の骨転移や多凳性骨髄腫の治療に用いられるビスフォスフォネート(以下BP)注射剤の重篤な有害事象として,顎骨壊死(bisphosphonate related osteonecrosis of the jaw: BRONJ)が注目されている。本研究ではBRONJの現状を把握する目的で臨床的検討を行った。対象:2006年7月?2008年10月までの2年3か月間にBP注射剤投与に開連して当科を受診した36例を対象とした。結果:BP剤投与前顎骨精査依頼は12例で,BP剤投与患者24例であつた。BP投与患者7例にBRONJが認められ,17例は発症しなかった。7例はBP剤投与中に抜歯や急性歯性感染症を契機にBRONJを発症していた。BP投与前およびBRONJを発症していない患者に対する歯性感染症の原因除去治療は新たなBRONJの発生を予防した。結論:BRONJは通常の骨髄炎の治療に反応せず,極めて難治性であることが最大の問題点である。したがって,現状ではBRONJ発症予防に重点を置いた対応が最も効果的であり,医科と歯科の良好な連携が必要であると考えられた。また,BRONJの治療は抗生剤を主とした保存的アプローチが患者のQOLの維持や向上につながると考えられた。
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