硝酸態窒素による硝酸還元酵素の誘導(Crawford,1995),低P、低Nによる板部生長の相対的増大(茎葉部/根部の比の低下)(Bates et al.,1996),低P、低Nによるフラボノイドであるアントシアニン生合成の促進(Bongue-Bartelsman and Philips,1995),茎葉部の高Nによる水稲の冷害助長(光合成産物の分配低下と不稔の助長)などの現象がよく知られている.これらの現象は植物の生理活性,生長や分化をもたらすいろいろな遺伝子の発現が植物栄養レベルによってコントロールされた結果であり,栄養元素が植物の生理活性や生長分化に対してシグナル機能を持つことを意味する(米山、増田,1997).なお,植物栄養のシグナル機能とは,NやPなどの種類と濃度が(最初の)「シグナル(情報)」となり,そのシグナルを受けて植物の生理活性や生長、分化をもたらすことである.植物栄養シグナルとその応答の間にはシグナル(伝達)物質が介在すると考えられるが,介在するシグナル物質が不明である場合には植物栄養が直接的にシグナル機能を発揮するようにみえる.ここでは,植物の生理活性や生長、分化という応答を引き起こす「情事臥 となるものをすべて「シグナル」と称した.
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