火山噴出物は何を語るのか

嶋野 岳人

摘要

本稿では概略的な解説を行うことにつとめたため，ごく限られた手法，モデルしか紹介できなかったが，「脱ガス」はまだまだalternativeな手法，解釈の可能性が残された問題であり，噴出物は今なお解読しきれないロゼッタストーンである。著者はこれまで主に玄武岩質から安山岩質の噴出物を対象にマグマの上昇過程に関する研究を行ってきた。一方，多くの理論，実験的研究は珪長質マグマ（特に流紋岩質マグマ）を対象にしたものが多い。そのためか，しばしば火道内のマグマの流動機構や発泡過程のイメージが自分と異なると感じることがあった。その最も顕著なものは気泡の合体である。私は玄武岩マグマの解析を通して合体の効果が核形成や成長の結果出来た組織を著しく書き換えていることを感じ，それは珪長質マグマでも相当影響があるだろうと考えていた。一方，流紋岩質マグマの爆発的噴火では気泡合体はほとんど効いていないと考えられていた。最近では実験的研究により珪長質マグマでも状況により気泡合体が重要であることが認識されるようになったが，こういったイメージの違いに気づくのにやや時間が掛かった。しかし，幅広く様々な研究者と議論したことで少しでも早くこういうイメージの違いに気づくことが出来たのではないかと思う。今後噴出物を用いて研究を行おうとしている読者には，本稿で取り上げた手法やモデルだけに捕らわれることなく，様々な手法，現象に関心を持ち，チャレンジすることを期待したい。

火山噴出物は何を語るのか

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