シリケイトメルト中の水の拡散

奥村 聡

摘要

火山噴火が軽石などを噴出する爆発的な噴火になるか，溶岩流·溶岩ドームを噴出する比較的穏やかな噴火になるかは現在の火山学における重要な研究課題の一つである。このような噴火様式（爆発性·マグマ噴出率·総噴出量·継続時間·周期性など）の多様性を生ずる原因を解明するためには，マグマが火道（マグマ溜まりと地表をつなぐマグマの通り道）内を上昇し，地表へ噴出するまでの上昇プロセスを理解する必要がある（Fig. 1）。特に，水はマグマ中の主要な揮発性成分であり，その役割を定量化することが欠かせない。マグマだまりにおいて，シリケイトメルトには数wt％の水が溶解していて，マグマが火道内を上昇し減圧されると，メルトに溶解していた水は気泡として析出する。メルトの脱水に伴う気泡形成は，マグマのバルク密度を下げるため，マグマを地表へ噴出させる駆動力となる。一方で，形成された気泡が火道壁やマグマヘッド（火道最上部の表面）まで連結して，内部のガス成分がマグマの外部へ逃げること（ここではマグマの脱ガスと呼ぶ）で気泡率が下がると，マグマのバルク密度は増加し，上昇の駆動力が弱められる（Fig. 1）（例えばJaupart and Allegre，1991）。また噴火のダイナミクスを議論するうえで欠かせないマグマの物性（粘性や密度）は，含水量に強く依存する（例えばHess and Dingwell，1996；Ochs and Lange，1999）。火山噴火のメカニズムと多様性の原因を解明するためには，このような素過程一つ一つについて, 定量的な理解を積み重ねていく必要がある。

シリケイトメルト中の水の拡散

摘要

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