マグマのガス浸透率は，マグマ中に溶存していた揮発性成分がマグマ上昇に伴う減圧等の影響で析出した状態の（この状態を以下では単にガスと呼ぶ），ガスの流量を規定する重要な量である。 この量はマグマの脱ガス問題を議論する上で重要な役割を果たす。 マグマの脱ガスとは，マグマ外部へガスが流出する現象を指し，噴火前後のマグマの揮発性成分量の差の見積もり等から広く認識されていて（例えばGardner et al., 1991），その流出量（逆に言えばマグマ内部に残存するガス量）は噴火の爆発性を支配すると考えられている（例えばJaupart and Allegre, 1991；Yoshida and Koyaguchi，1999）。 しかし脱ガスのプロセスや流量，マグマ上昇ダイナミクスとの関係など，解明されていない問題が多数残っている。 これまでに，高粘性マグマの脱ガスの主要なプロセスの1つとして，多孔質なマグマ中をガスが浸透流として流れるプロセスが提案され，マグマ中のガス圧の時間変化（Eicheberge et al.,1986）や火道内マグマ上昇モデル（Melnik and Sparks, 1999，2002；Melnik et al., 2005）などに組み込まれてきた。 これらの研究でガス浸透流プロセスをマグマ上昇モデルへ組み込む際には，ガス流量を規定するパラメータとしてマグマのガス浸透率が用いられてきた。 しかしマグマのガス浸透率については近年ようやくデータが揃いつつある状況であり，いまだ不明な点が多い。 従って脱ガス問題へのガス浸透流プロセスの寄与を議論する上で，マグマのガス浸透率の性質をよく理解しておくことが重要である。
展开▼
