筆者は,岩手県田野畑鉱山で発見された田野畑石の研究に携わり,その記載によって2013年9月に日本鉱物科学会より楼井賞(第40号メダル)を授与していただきました。筆者はこれまで,透過塑電子顕微鏡(TEM)を用いた鉱物の組織解析に関わる研究を行ってきました。近年,新たに発見される鉱物は小さなものが多く,新鉱物の記載にTEMによる解析が大きく貢献した研究が多数発表されています。TEMは,極めて小さい結晶の基本的な結晶学的な情報を解析できるだけでなく,積層欠陥や双晶欠陥などの局所構造を観察できる有効な手段でもあります。著者が携わった2つの新鉱物,田野畑石(Nagase et al.,2012)ならびに島崎石(Kusachi et al.,2013)は,どちらもこのような積層欠陥や双晶欠陥を多く含む鉱物であり,TEMによる観察ならびに解析結果がこれらの新鉱物の記載に貢献できたことを喜びに感じます。そして,これらの研究により,今回,櫻井賞を受賞できたことを大変光栄に思います。ここでは受賞対象となりました田野畑石について簡単に述べたいと思います。
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