太古の気候変動はどこまでわかったか？

黒田潤一郎

摘要

古気候?環境学は，太古の時代の地球環境や気候を知り，その変動を駆動するメカニズムを理解する学問である。機器観測による記録が得られない時代の気候を知るためには，代替指標(プロキシ)が必要となる。過去数万年の極域の気温や大気CO_2組成の変動の復元には，氷床コァが信頼度の高い情報を提供する。しかし,氷床コアが得られない古い時代は，海底堆積物が重要な古気候ァーカイブとなる。なぜ古気候?古環境研究が重要なのだろうか？筆者は2つの理由があると考えている。1つは，古気候?古環境情報が惑星地球の表層圏が取りうる環境変化の「振幅」を教えてくれること。もう1つは，現在の地球が直面している気候変動の位置づけ，つまり最近の気候変動がどれほど急激で異常であるのかを教えてくれることである。大気CO_2濃度が高かった時代，気候システムはどのように変化したのか？モンスーンシステムは，全球の気温上昇や大気?海洋循環パターンの変化に対してどの程度の回復力があったのか？地質時代において，氷床変動に起因した海水準変動はどの程度の頻度と振幅で起こつてきたのか？こういった地球システムの重要な課題に取り組むには，科学海洋掘削の試料が不可欠だ。

太古の気候変動はどこまでわかったか？

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