化膿性椎体炎,腸腰筋（大腰筋）膿瘍

松田直也; 細川直登

摘要

化膿性椎体炎は,血行性に遠隔感染巣から椎間板に隣接するスペースに菌が播種されて発生する.通常,椎間板を挟んで上下2椎体に感染が及ぶ.椎体炎の診断は,初期には変性による変化と間違われ,数カ月遅れることがしばしばある.高齢化や血管内デバイスなどの使用増加を背景に増加している.最も多い原因は遠隔感染巣からの血流感染であるが，人工物を用いる脊椎手術中の感染や,寝たきり患者の褥瘡など，隣接する組織から連続性に感染を起こすものもある.感染部位は腰椎が最も多く,次に胸椎が続く.起炎菌は若年?男性では黄色ブドウ球菌が多い.高齢者?女性ではグラム陰性桿菌の割合が増える.腸腰筋は解剖学的には大腰筋と腸骨筋に分けられ，それぞれ感染を起こす経路が異なる.大腰筋膿瘍は脊椎由来で,腸骨筋膿瘍は股関節や仙腸関節由来のものが多いとされ,両者は分けて考えるべきとされる.本稿では椎体炎に関連した大腰筋膿瘍について述べる.大腰筋膿瘍は,隣接する構造物の感染後に発症する(二次性大腰筋膿瘍)ことがほとんどである.Staphylococcus aureusは化膿性椎体炎に続発する大腰筋膿瘍の最も一般的な原因菌である.通常,大腰筋内に限局しているが,筋内を通じて臀部,股関節,大腿上部にまで及ぶこともある.筆者は発熱患者のCTを撮った場合,大腰筋に異常がないかを確認することをルーチンにしている.

化膿性椎体炎,腸腰筋（大腰筋）膿瘍

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