マイクロバブルによる乱流摩擦抵抗低減

村井祐一

摘要

その最初の発表は1973年であった．船体をワイヤでぐるりと囲み，そこに電流を流すと，水電解で発生したマイクロバブルが摩擦抵抗を減らす．メカニズムは当初，境界層内の平均密度の低下に伴うレイノルズせん断応力の減少とされた．マイクロバブルの混入で粘性低層付近の実効粘度が増加するためという説も発表された．しかし後に実験が進むほど，これらの説明は測定データに対応しないことが判っていく．密度や粘度といった物性の変化だけでは現象を整理できない．その後，低レイノルズ乱流を対象としたDNSで，縦渦内への気泡集中により縦渦が壁面から遠ざかることが抵抗低減の主要因だと発表された．一時，この説は広く受け入れられが，統一的理解にはほど遠い．マイクロバブルの濃度や，せん断歪み速度のオーダーで干渉機構はまるで異なる．加えて，マイクロバブル表面の電気化学的特性，水中へのガス溶解や飽和，壁面への付着や静電反発など，問題は実に幅広い．ブラウン運動が顕在化するサブマイクロバブル·ナノバブルまで行くと，調査対象はコロイド界面化学の領域に入る．本稿では実寸で10～200ミクロンのマイクロバブルによる乱流摩擦抵抗低減にっいて，最近の理解の進展を紹介する．ただし仮説主導型の分野にっき，実証は道半ばだとして，大いに批判的な視点でご一読頂きたい．

マイクロバブルによる乱流摩擦抵抗低減

摘要

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