農業気象学入門

摘要

本害は，恐らく初めて出版された農業気象学の「入門書」である。入門書とは，ある分野について知っておかなければならない言語や知識について，初学者や未経験者が理解しやすいようにまとめられた手引書である。この役割から鑑みて本書は，「はじめに」に書かれている2つのねらいすなわち（1)様々な読者が困難なく農業気象学を理解できること，（2)農業関係の現場で農業気象学的な問題に出会った際に役立つ本であること，について，概ね達成していると感じた。全体的に平易な表現で書かれており，初学者でも読み進められる内容でありながら，基礎や現象の理解のために少々高度な数式もあり，また様々な現場、分野での実例や最新の知見も豊富に盛り込まれている。私は微気象やフラックスが専門で，農業気象学の他の分野についての知識が浅く，学会でも議論についていけないことが多々あつたが，そのような人間にとって本書は，様々な分野の面白さや最新の動向をうかがい知ることが出来るうつてつけの本だと感じた。また学生にとっても，自分が学ぶ農業気象学という学問が何を扱い，どのように研究が進んでいて，現場でどう役立っているのかを知ることが出来る良い入門書になっていると思う。特に本書で感じたことは，各章や節でその分野の面白さや重要性が生き生きと伝わつてくる空気感である。恐らく，多くの著者がそれぞれの持ち味を生かし，比較的自由に執筆した結果なのではと拝察した。このことは，昨年出版された教科書「農業気象-環境学第三版」（朝倉書店）力 99ページなのに対し，本書が320ページあることからもうかがえる。

農業気象学入門

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