経済的な意味で「合理的な」安全対策を策定するにはどうすればよいだろうか。合理的という言葉が強すぎるなら、上記の問いを「金額として過小でもなく過大でもない」安全対策を策定するにはどうすればよいだろうかと言い換えてもよい。やや視点を変えて「明確な根拠をもって」安全対策費を決定するにはどうすればよいだろうかと問うこともできる。いずれにしても、安全向上のために支出できる予算に限りがある以上、必要な費用と得られる効果を考慮して無駄なく使うことが望ましい。最近、上記の意味において改めて安全と経済の関係を考える機運が高まっている。Chen et al.(2021)およびReniers and Van Erp(2016)はoperational safety economicsという言葉を用いて安全に関する経済的分析の歴史的経緯、現状、今後の課題を非常に丁寧にまとめている。日本においても中央労働災害防止協会?産業技術総合研究所(2021;2022)による「安全対策の経済的評価に関する調査研究」の一環として、企業が自ら安全対策の経済的評価を簡便に実施できるよう支援するツールの開発が進められているところである。
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