文化財のX線CT調査

摘要

九州国立博物館でのX線CTを用いた研究成果が広まり，文化庁が新たに彫刻や工芸の国宝重要文化財を指定する際の会議においても，従来は「X線撮影は行いましたか？」と委員から聞かれていたが，昨今は「CTは撮りましたか？」と必ず聞かれる時代になった．この変化は文献や外見から得られる情報を裏付けられるX線CT（以下，CT）調査は立体文化財の調査においてなくてはならないものになった表れである．そんな中，東京国立博物館でも2014年に2種類の大型X線CTと微少部観察用X線CTの3台のCTを導入した．また，企業，大学，博物館施設等にCTの設置が進む昨今，文化財の調査者が装置をもっていなくとも外部の検査機関に設置されている装置で撮影を行うことが普通の研究手法となり，当館だけでも年間に10～20件程度の外部依頼の撮影を行う．この数から判断して，装置の所有機関の増加以上にCT画像に多くの人間が触れる機会が増えていると考えるのは容易である．CT撮影は通常のX線撮影調査に比べて撮影時の設定が多岐にわたるため，実際に装置を運転し画像の解析をすると，撮影や解析には予想以上に高いハードルがいくつもあった．本稿は，CT設置から解析を行う段階での疑問を解決していく過程と現状を紹介しながら，これからCTの撮影や解析に携わる方々の支えになることを目的としている．

文化財のX線CT調査

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