切削工具概論

臼杵年

摘要

切削加工の高速化は，工作機械の開発とともに工具材料の開発によって進められてきた歴史がある．切削工具に必要とされる一般的な材料特性は，①硬さ，②靱性，③熱的特性，④親和性の低さ，⑤化学的安定性などである．その中で硬さと靱性は相反する特性であり，工具メーカーでより高いレベルでの両立を目指して工具材種の開発が行われてきた.コーティング工具は，この両立を目指す一つの方向として，靱性の高い母材を用いて表面に硬質の耐摩耗性の高い安定尚な化合物（酸化物，窒化物，炭化物，炭窒化物など）をコーティングして耐摩耗性と靱性との両立を実現した工具材種で，現在の主力の工具材料である．コーティング方法の歴史としては，CVD（Chemical Vapor Deposition：化学的蒸着法）から始まる．長所としては，対象物の全方向に均一な膜形成が可能で，母材との密着性が良好である点である．欠点は，処理温度が高いため耐熱性の高い（ハイス等には適用できない）母材が必要で，化学反応を利用しているためコーティングできる材種も限定される．現在でもこの長所の優位性からコーティング材種は限定されるが活用されている．

切削工具概論

摘要

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