わが国の主要露地野菜の生産実態の同定に基づく温暖化が市場入荷に及ぼす影響の評価

大原源二; 岡田邦彦

摘要

気候的最適立地配置を仮定して，栽培事例と統計値に基づきin市町村、旬単位で生産実態を同定した結果（大原-岡田，2020)と温暖化予測値(MIROC5, RCP8.5)から，温暖化が主要露地野菜5種の市場入荷に及ぼす影響を，栽培開始期と在圃貯蔵期間を現在のままとして評価した。気温上昇に伴い栽培期間、収穫期間が変わることで，H 別の市場出荷のための収穫面積は現在と比べて大きく変化した。全品目で，晩夏から秋にかけて気温が低下する時期に作付けられる作型では収穫期の前進、集中化が起こり，現在と比べて市場入荷量が年末を中心に1.2-2.5倍と極端に増加した後0.7-0.1倍と極端に減少することが予測された。また，高温期と低温期の産地が切り替わる時期に一時的に減少する傾向を示した。初冬から春に収穫期を迎える低温期の産地や高温期と低温期の産地をつなぐ中間期の産地では作付け回数が限られ，栽培開始期が特定の時期に集中する。しかし，高温期に長期間収穫する産地では作付け回数が多く，作型が分散していることが，このような差を生じさせた。また，冬季の在圃貯蔵の期間も大きく影響すると考えられた。温暖化の進行に合わせ栽培開始期を適応させることが極めて重要で，気温低下期の作型の分散や産地間連携の最適化は急務と判断される。評価期間中の平均気温で評価すると栽培好適領域を逸脱する割合は 2046 — 2065年までは大きくはないと推定された。し力、し，気温の年々変動は極めて大きく，温暖化の影響を上回る場合もある。そのため，収穫期の年々変動による需給の乖離は大きな問題になる可能性が高い。より精度の高い評価には，10a当たり収量ではなく，圃場、産地レベルで球数による出荷割合の低下をもたらす病虫害や生理生態的異常、気象災害などの影響を調査し，結果を集積することが重要と考えられる。

わが国の主要露地野菜の生産実態の同定に基づく温暖化が市場入荷に及ぼす影響の評価

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