本研究では各国のインフラストラクチャーの現状および歴史を調査し、そこからインフラストラクチャーの背景となる文化と、この文化の延長線上にあるインフラストラクチャー技術との関係を明らかにすることを目的とする。例えば、我が国には独自のインフラストラクチャーとその背景となる文化があるが、新潟大地震でインフラストラクチャーの脆さが明らかとなった。我が国と同様の地震国であるイタリアのインフラストラクチャー技術および文化の研究は我が国のインフラストラクチャーの在り方、今後の方向性を検討する上で極めて有力な見本になるものと期待される。また、米国ではガス供給と電力供給は同一組織の場合が多い。更に、ロスアンジェルス市ではDepartment of Water and Power (DWP)が、水道·ガス·電力を一括管理·運営している。一方、我が国では両者は競合する企業体となっている。また、水道は地方自治体により管理·運営されている。このため、我が国では3者が順に道路を掘り起こし長期に渡る工事や多大な経費の損失を招いている。これらの事実は、インフラストラクチャーに対する国家や地方自治体の政策、資金投下のあり方、国民生活への国家の関与のあり方に大きな差異があることを明示している。このようなインフラストラクチャーそのものの差異、更に、この差異をもたらしている文化の差異を明確にすることが本研究の主たる目的である。また、本研究の成果に基づき、将来の我が国のインフラストラクチャーのあるべき方向性を提案することが、本研究の最終目的となる。
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