波動歯車装置を含む位置決め機構の厳密な線形化手法による非線形補償

岩崎誠; 飼沼諒; 山元縄文沖津良史

摘要

筆者らは，非線形ばね特性·非線形摩擦·角度伝達誤差を考慮した2慣性モデルによる位置決め機構のモデル化と，セミクローズド制御系を前提としたモデルベースの負荷位置定常偏差補償（以下，静的補償），さらに，モデルベースのフィードフォワード補償による負荷振動の抑制（以下，動的補償）を提案してきた．本論文では，それら従来研究の成果を展開し，波動歯車装置を内在する位置決め機構に対して，セミクローズド位置決め制御系に厳密な線形化手法を適用し，負荷位置に対する静的·動的補償を実現する手法を提案する．厳密な線形化手法とは，対象とする非線形システムの状態量に対する線形化フィードバックと大力に対する座標変換によって，拡大系の入出力特性を線形化する手法である．この手法を適用するためには，対象システムに内在する非線形要素が微分可能（その階数はシステムに依存する）な関数で記述されている必要があるため，ここでは先ず，本手法適用に資する非線形要素のモデリングを行う．一方，文献にて紹介されている線形化手法はフィードバック型であり，フルクローズド制御が前提であるため，ここではフィードフォワード型に線形化アルゴリズムを等価変換することで，むだ時間を含む本セミクローズド制御系への適用展開を試みる．すなわち，本研究は，“セミクローズド位置決め制御系を前提に，厳密な線形化手法による非線形補償を実現するための，波動歯車装置の非線形要素モデリング”，“フィードフォワード型厳密な線形化補償器の構築と設計”，及び“セミクローズド制御系による位置決め装置に対する静的·動的補償性能の評価”を扱うものである．提案手法は，供試機を用いた位置決め実験により，その有効性が評価される．

波動歯車装置を含む位置決め機構の厳密な線形化手法による非線形補償

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