島根県隠岐国賀産ガロン沸石

松山 文彦; 藤本雅太郎; 松原 聰

摘要

本報では，隠岐島前国賀産の沸石の1種について，ガロン沸石と確定できるデータを記載した。これまで日本産のガロン沸石として報告されているもののうち，丹沢から記載されたガロン沸石は，石英と共生して脈状をなして産する（Seki, 1969）。シリカに乏しい沸石であるガロン沸石が石英を伴い産出することは考えにくく，丹沢産ガロン沸石については再検討の必要があるかもしれない。また，本邦での他のガロン沸石についても，結晶化学的な情報を得る必要があろう。国賀ではガロン沸石とトムソン沸石と共存していることが確認された。この共存は，他の産地でも認められる（例えば，Antrim，アイルランド，アイスランド東部（Walker1962））。ただし，Walker（1962）には，トムソン沸石とガロン沸石との晶出順序に関しての明確な言及は無い。既に述べたように，国賀産ガロン沸石の場合，ガロン沸石はトムソン沸石の後に生成している（Fig.2①）。また，ガロン沸石の生成後に十字沸石が生成している（Fig.2②）。この十字沸石は，アルカリイオンを多く含む（ソーダ十字沸石，Table2のNo.14）傾向がある。ガロン沸石生成環境や他の沸石鉱物との共生関係などは不明な点が多く，それらの解明は今後の大きな課題である。鉱物の和名は，日本産鉱物型録（松原·宮脇，2006）に準拠した。

島根県隠岐国賀産ガロン沸石

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