アルゴンガスクラスターイオンビーム(Ar-GCIB:Argon Gas Cluster Ion Beam)の有機物に対する低損傷スパッタリング効果が見出され,表面分析の深さ方向分析への応用が急速に拡大している.現在では深さ方向分析だけではなく,材料表面の汚染除去のためのクリーニングやバルク情報を得るための断面加工への応用も検討されている.本稿では固体表面を分析する手法のなかでもX線光電子分光分析法(XPS:X-ray Photoelectron Spectroscopy)や飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS:Time-of-Flight Secondary Ion Mass Spectrometry)におけるAr-GCIBの応用について述べる.XPSやTOF-SIMSを用いると,表面から数ナノメートル以下の非常に浅い領域で元素組成,電子状態,分子構造などの情報を得ることができる.XPS,TOF-SIMSともに導電物·絶縁物,有機物·無機物を問わず広く適用可能であり,材料の研究開発から製品の品質管理,さらにデバイスの故障解析に至るまで広く用いられている.これら
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