ペーパ系摩擦材を用いた湿式摩擦機構における摩擦振動

三本木　嗣; 渋谷隆夫; 森下　信

摘要

自動車では摩擦力を利用した機構が多く用いられており，その作用により生じる振動や異音が問題となることがある．従来，これらは摩擦振動の問題として扱われている．このうち動力伝達機構や制動機構ではクラッチの「シヤダー」と呼ばれる振動やブレーキの「スキール」などと呼ばれる異音が問題視され，その低減や解消は古くから重要な技術課題とされている．これらに対し，亘理らによる実験的，理論的研究，Fosberryら，井上や末岡らによる実用的な研究が行われている．上記の問題は，乾式クラッチやプレーキにおいてだけではなく，オートマチックトランスミッション（Automatic transmission，A/T）などで多用されている湿式摩擦機構においても発生する．この場合はトルクコンバータに装着されるロックアップクラッチにおけるシヤダーや変速時に発生するスキールとして指摘されている．これらも古くから研究対象とされており，近年においても，加藤らによる実機を用いた実験的な研究や服部らによる摩擦振動の安定性に関する研究などが行われてきた．このように，今日まで摩擦方式を問わず多くの研究がなされてきたが，音が発生するための必要条件としての板状構造体の面外振動に焦点をあてた研究は少ない．また，摩擦振動に起因する音がどのように発生するか示した研究もほとんどみられず，振動学的な観点からの考察が十分ではない．結果として，現状においても摩擦振動の低減や解消の技術は確立されておらず，車両の商品性と静粛性向上の立場から，その実現は重要な技術課題とされている．

ペーパ系摩擦材を用いた湿式摩擦機構における摩擦振動

摘要

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