紙ハンドリングのからくり「輪転印刷機」

赤塚正和; 佐々木将志; 橋本巨Masakazu AKATSUKAMasashi SASAKIHiromu HASHIMOTO

摘要

紙は日常よく手にする素材で，種々の用途に古くから使用されてきた．中でも，簡便に情報を記録·保存·配布する媒体として優れており，印刷による大量複製技術と組み合わせることで，雑誌·新聞などさまざまな形をとってわれわれの生活に入り込んでいる．紙はパルプが浮遊する水（固形物の質量比約1％）から搾水·乾燥工程を経て連続紙（同93％程度）となり，直径数mの巻取紙として製紙機械から取り出される．用途によっては表面をコーティングされた後，直径1m程度の小径巻取紙に加工され，印刷工場などに運ばれる．印刷機では巻取紙から巻き出した紙に連続的に印刷し，切断·折り畳むことで，われわれが手に取るサイズの印刷物ができる．雑誌は，ページブロックごとに印刷されたものを集め製本することで完成する．新聞やチラシ広告では，折り畳まれて印刷機から排出されたものが，そのまま製品になる．なお，われわれが情報や価値を消費した後に，紙はリサイクルされ，製紙会社で次の紙に生まれ変わる．これら一連の流れで，紙は，流体·連続紙·切断紙と姿を変え，それぞれのプロセスで上手に扱う必要があるが，紙自体は異方性，通気性，不均一性を有する複合材料で理論的な取扱いが難しく，そのハンドリング技術は経験と試行錯誤で培われてきたものが多い．しかしながら，紙や印刷物の品質，生産性，操業安定性を向上させるためには，理論化と解析技術は必須で，それぞれの装置においてからくりを現在の技術で性能向上させている事例が多い．この中からここでは，印刷機で紙をハンドリングする技術とからくりについて概要を紹介する．なお，あらかじめ切った紙（シート）を供給して印刷する枚葉印刷機も多く使用されているが，紙面の制約から巻取紙を使用する輪転印刷機に関し，紙の供給·搬送·折畳み機構を紹介する．

紙ハンドリングのからくり「輪転印刷機」

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