成形中の工具/被加工材界面のトライボロジー

牧野武彦

摘要

塑性加工における工具/被加工材の接触界面の挙動は，製品の形状精度や内部応力状態に強い影響を与えると同時に，工具寿命にも関わるために,被加工材の塑性変形挙動そのものと同等に重要な研究対象である.特に，被加工材が小さい場合，接触界面が材料の体積に占める割合が大きくなり,より重要度が増すことになる.小さい材料では，材料の結晶性による塑性変形の不均一性と，摩擦の不均一性および加工中の変化は，無視できない問題となる.マクロスケールの材料の成形では扱わなかった，材料が本来もつ挙動を丹念に理解する必要があるのが，マイクロ·メゾ（マクロとマイクロの中間）スケールの成形の学問的な存在意義であるとも言える.マイクロ·メゾスケールの成形部品は，近い将来，人体表面や内部への電子機器の装着などを想定した，高強度と高信頼性が要求される用途で必要になると考えられる.工具/被加工材の接触界面の挙動を知るために一番基本的なのが加工中の摩擦力の測定である.しかし成形加工ではこの測定は簡単ではない.次に基本的なのは加工後の工具表面の観察や測定であるが，加工中の挙動との対応が明瞭ではない.さらに，加工中の摩擦界面は密閉されているために直接測定や観察することが困難である.このため様々な工夫や手法の開発が必要となる.本稿ではこれらの例を紹介することを目的とする.

成形中の工具/被加工材界面のトライボロジー

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