スポーツ用（走行用）義足について

沖野敦郎

摘要

義肢とは，切断により四肢の一部を欠損した場合に，元の手足の形態または機能を復元するために装着·使用する人工の手足（JIS用語）である.事故や病気や戦争等で切断した手や足を補うために装着する代替物のことであり，上肢の義肢を「義手」,下肢の義肢を「義足」と呼ぶ.以前の日本では「障害」を隠すことが当たり前とされ，義肢を見せることは恥ずかしい，はしたないと考える義肢ユーザーが多数であったが，近年は義肢を見せることに抵抗が少ない義肢ユーザーが増えてきた.最近は2020年東京パラリンピック開催まで2年を切り，メディア等で度々「義足」や「義手」を装着してスポーツを行うアスリートの姿を目にする機会が増えたのも要因の一つと考えられる.スポーツ時に使用する義肢は機能の復元を最優先としており，元の手足の形態復元は二の次になっている.科学技術の進歩は義肢においても反映され，ドイツの片下腿義足(片足膝下義足）選手の走幅跳びの自己記録がロンドンオリンピック優勝記録を上回る事態が起きた.彼が競技を始めた直後，世間は義足を履いて躍動する彼の雄姿を称賛したが，記録が伸びていくと称賛が非難に変わり出した.「義足はズルい」「器具を用いたドーピングだ」という声まで上がった.しかし.実際にスポーツ用義足の機能·構造を熟知した人は多くはない.そこで，今回は筆者が数多く製作している走行に特化したスポーツ用義足について述べていき，理解を深めていただければ，義足は本当にズルいのかどうか良識ある読者は判断できると思う.

スポーツ用（走行用）義足について

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