このたび,「がん薬物療法専門医のために」という副題をつけた重厚にしてかつ簡潔に編集された教科書『新臨床腫瘍学』が上梓された.「重厚」と「簡潔」は反意語的で,表現としてそぐわないが,筆者は本書を評価するにはそれがぴったりな表現と確信する.腫瘍学の教科書といえばそのバイブル的存在となっている『Cancer Principles&Practice of Oncology』(DeVita VT et al ed)が有名であり,筆者の書架にはoncologyを学んだ第Ⅱ版(1985年)から第Ⅶ版(2005年)が並んでいる.その3年から4年ごとの改訂がこの20年余にみられた日進月歩のoncologyの歴史を示している.日本語の教科書として出版された本書はその名教科書に倣い,「I.Molecular Biology of Cancer」,「Ⅱ.Principle of Oncology」,「Ⅲ.Practiceof Oncology」の三部に大きく分けて編集され,最後に付録として疫学指標を載せている.824頁からなる本書は腫瘍学のエッセンスが簡潔に記載されており,臨床腫瘍医を目指す医師に必要な知識が網羅されているという意味では,約3,000頁のDeVitaらの教科書に匹敵する内容を含んでいる.本書の編集を「重厚」かつ「簡潔」と表現したのはそういう意味である.
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