本論文の内容は,Journal of Mass Spectrometry誌にSpecial Featureとして掲載されたCharge inversion mass spectrometry:dissociation of resonantly neutral-ized moleculesの基礎の部分を日本語訳し,若干の改稿をするとともに最近の論文を付け加えたものである.この論文では電子脱離または電子移動と呼ばれる電子が移動する反応を利用した4種の電荷逆転質量分析法の発展とそれぞれの特徴について述べてきた.イオン化法や質量分析装置の発展とともに電荷逆転質量分析法も発展してきたことがわかる.電荷逆転質量分析法は,正イオン,中性種,負イオンの違いを利用することによって,イオンや中性種のエネルギー,構造,反応性について他の方法では得られない知見を与えてきた.同時に,化学反応の基礎となる反応中間体に関する知見や,電子移動反応など原子分子物理学の基礎的知見を与えるのにも役立っている.
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