1958年,X線結晶構造解析の手法を用いて,Kendrewがミオグロビンの立体構造を決定して以来多数のタンパク質の結晶構造が解明されてきた.現在,70,000以上の結晶構造がPDB(protein data bank)に収められており,これらはさまざまな生命現象の解明に貢献してきた.例えば,Yonath·Steitz·Ramakrishnanの3名は,2000年前後,それぞれ独自に,巨大なタンパク質·核酸複合体であるリボソームの結晶構造を決定し,遺伝子情報がタンパク質に翻訳される機構を原子レベルで解明したことにより,2009年のノーベル化学賞を受賞した.このように分子生物学や生化学におけるさまざまな現象の機構解明に寄与してきたタンパク質結晶構造解析は,産業界においても有用な技術である.本稿では,解析されたタンパク質結晶構造がどのように産業利用されているか,医薬品開発と産業用酵素開発の二分野について報告したい.
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