ヒト染色体の観察における分解能は,二次元投影像においては38nm,三次元像においては120nmと限られている.三次元像における分解能の低下は,試料の放射線損傷によるものと考えられる.放射線損傷は,生体試料をクライオ凍結することによって緩和でき,X線回折顕微法の三次元観察において,10nmの分解能が達成可能と試算されている.また,X腺回折顕微法におけるこれまでの生体試料観察においては,試料は乾燥状態にあった.生きている状態により近く,放射線損傷を受けにくい,凍結水和状態での生体試料の観察が今後の課題である.さらに,現在,日米欧で開発が進められているX線自由電子レーザーを用いると,その超短パルス性能により,試料構造が破壊される前にコヒーレントX線回折測定を行う可能性が閃ける.例え蟻生体分子試料のコピーを,次々とX線自由電子レーザーに照射することにより,三次元原子構造解析を行うというシナリオが議論されている.この方法により,生物·医学上重要であるが,結晶化が困難な膜タンパク質の原子構造解析への可能性が開かれると期待されている.また,同じ構造をもつコピーが存在しない細胞や細胞小器官に対しては,X線自由電子レーザーを分け,いくつかの方向から同時に試料に照射することによって,入射角が異なるコヒーレントX線回折パターンを同時測定するアイデアがSayreらによって提案されている.これにより,放射線損傷の影響を受けず,細胞などの試料を立体的に観察ずることが軒能となる.X線自由電子レーザーの登場により,Sayreが長年思い描いてきた,結晶以外の試料に対する,X線による原子構造解析へさらに一歩近づく.ヒト染色体のX級回折顕微鏡観察は,理研·基幹研究所の,前島一博(現在,国立遺伝学研究所),今本尚子,および,理研·放射光科学総合研究センターの高橋幸生(大阪大学特任講師),石川哲也(敬称略)との共同研究である·本研究は科研費およびX線自由電子レーザー利用推進研究課題の助成を受けたものである.X-ray crystallography can routinely determine the atomic structure of crystalline materials. The method can be extended to non-crystalline materials by using coherent X-ray diffraction. In X-ray diffraction microscopy, coherent X-ray diffraction patterns are sampled finely enough to satisfy the oversampling condition for solving the phase problem, and the iterative phase retrieval method is used for the sample image reconstruction. Recently, we succeeded in three-dimensional visualization of an unstained human chromosome by X-ray diffraction microscopy. It is the first hard X-ray tomography for cellular organelles. The reconstructed images revealed the internal axial structure, demonstrating an excellent image-contrast, of the method.
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